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傍らに。

古いものを訪ね歩く時、ふいに時間がギューンとさかのぼるような錯覚におちいる時があります。小さい時に うちにあったものとの出会いじゃなくても そうなります。

幼少の時の記憶というのは ふいに現れるから不思議です。学校に通い始める前というのは 家の中が全ての世界だから 記憶の深いところに刻まれているのかもしれません。タイル張りが印象的だった古い台所・・・スプリングの跳ね返りが楽しくて 飛び跳ねて壊してしまった 布張りの赤いソファ・・・玄関の下駄箱の上の 仲良しねこの陶器の置物・・・フリンジのカバーの掛かった足踏みミシン・・・そのどれもが 心の底の風景として 刻まれています。

実際にうちにあったものではなくても どこかで触ったことのあるものや、見かけたもの・・・それらと同じ感覚のものに 妙に惹かれてしまうのです。ただし、それらは 単なるノスタルジーから得られる感覚とは違います。素朴で ちょっとお洒落で、今の時代に 生み出されることの無い 当時のメーカーの人の手や感情が生み出した暖かさを感じられるものだから、心惹かれてしまうのだと思います。

花のモチーフが素敵なこのキャリーケースも 幼少の頃の記憶の中に 確かにあるものです。色とりどりの毛糸が入っていて 長い編み棒が刺さっていた印象です。そうだとすれば およそ40~50年前のものとは思えないくらい ちゃんとしていて綺麗です。よくぞ この状態で残っていてくれたものだと感心します。誰しもが必要としたものではなかったから、 思い切って買ったものだからこそ大切にしよう・・・と、ものに対するその気持ちが伝わってくるのです。“そう思わせてくれるもの”って素敵だなぁと 眺めれば眺めるほどに そう感じるのです。私にとって “いいもの”とは そういうものだと思うのです。

昔の家の中という小さな世界の暮らしの傍らに こういうものがたくさんありました。この先 生み出されるものたちもこうあって欲しいと思うのです。

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